企業変革を後押しするクリエイティブの力、NOKのCI刷新後の変化とは
企業価値向上のために進められたブランド改革
自動車部品や精密機器分野で高い技術力を持つNOKグループは、長年にわたり世界市場で存在感を発揮してきた企業の一つだ。特にオイルシールやフレキシブルプリント基板(FPC)といった分野では高いシェアを誇り、日本のものづくりを支える企業として知られている。
一方で、優れた技術や製品を持ちながらも、一般消費者や求職者からの認知度は決して高いとは言えなかった。こうした課題に対応するため、同社は2024年にコーポレートアイデンティティ(CI)の刷新を実施。企業ブランドの再構築に踏み出した。
「目立たない企業」からの脱却を目指す
従来のNOKは、製造業らしく品質や技術力を重視しながらも、自社の魅力を積極的に発信することにはあまり注力してこなかった。
しかし、自動車業界の電動化やグローバル市場の変化、中国メーカーの台頭など、事業環境は大きく変わりつつある。こうした状況の中で、技術力だけでなく企業の存在価値やブランド力を高める必要性が高まっていた。
企業としての競争力を維持・向上させるためには、製品品質だけでなく「企業としてどう認識されるか」という視点も欠かせない。そのため、同社は企業価値を再定義する取り組みを進めたのである。
CI刷新が目指したもの
今回のCI刷新は、単なるロゴ変更やデザイン改修ではない。
グループ全体で統一感を持ちながらも、それぞれの企業が独自性を発揮できる仕組みを整え、組織としての一体感を強化することが大きな目的だった。
また、企業文化や価値観を社内外へ明確に伝えることで、従業員のエンゲージメント向上やグローバル展開の推進にもつなげる狙いがあった。
CI刷新から1年で見え始めた変化
ブランド戦略の成果は、企業内部にも少しずつ現れ始めている。
従業員の意識に生まれた変化
CI刷新後、NOKでは国内外の拠点でタウンホールミーティングを開催し、新たなブランドの意図や企業の方向性について経営陣が直接説明する機会を設けてきた。
その結果、従業員の間では新しい企業イメージへの理解が深まり、自分たちの仕事や企業文化とのつながりを実感する声も増えているという。
ブランドは単なるデザインではなく、社員一人ひとりの行動や価値観と結び付くことで初めて意味を持つ。こうした意識変化は、企業変革において重要な成果の一つといえるだろう。
海外拠点にも広がる企業理念
新しいCIは国内だけでなく海外拠点にも展開されている。
その過程で、各地域が自発的に新規事業や組織改革を検討する動きも生まれており、グローバル企業としての一体感が強まりつつある。
また、人材交流や組織横断的な連携も進み、企業グループ全体で知見やノウハウを共有する体制づくりが加速している。
ブランドが企業文化を育てる
企業のロゴやビジュアルデザインは目に見える変化だが、本質はその先にある。
ブランドが社内の共通言語となり、組織全体の行動指針として機能することで、企業文化そのものが形成されていく。
今回の取り組みは、デザインを起点にしながらも、組織運営や人材戦略と連動した包括的な変革として進められている点が特徴だ。
「Be」と「Do」から考える企業アイデンティティ

企業ブランドを考える上で重要なのが、「何をするか(Do)」と「どんな存在であるか(Be)」という視点である。
実績だけではなく存在意義を示す時代へ
これまで日本企業は、事業活動や実績を積み重ねることで企業価値を示してきた。
一方で、グローバル企業の多くは、まず企業としての使命や理想像を定義し、その実現に向けて事業活動を展開している。
近年は日本企業にも、企業の存在意義や社会的役割を明確に打ち出すことが求められるようになっている。
長年培った技術や文化がブランドの土台になる
ただし、理念やビジョンだけを掲げても十分ではない。
企業が長年培ってきた技術や実績、組織文化といった土台があるからこそ、ブランドとしての説得力が生まれる。
NOKの場合も、ものづくり企業として積み重ねてきた歴史や技術力があるからこそ、新たなブランドメッセージに現実味を持たせることができた。
変わらない本質をどう伝えるか
社会環境や市場は常に変化する。しかし、企業が大切にしてきた価値観や理念は簡単に変わるものではない。
重要なのは、本質を守りながら時代に合わせて伝え方を進化させることだ。
ブランド戦略やCI刷新は、そのための有効な手段の一つである。企業の歴史や文化を再認識しながら、未来へ向けた新たな姿を示すことができるからだ。
企業変革の鍵は「人」にある
企業の成長を支えるのは、最終的にはそこで働く人々である。
どれほど優れた戦略やブランドを掲げても、従業員の共感や行動が伴わなければ変革は定着しない。
NOKでは、継続的な対話や情報発信を通じて、企業理念の浸透を図りながら人的資本経営を推進している。
製品の品質だけでなく、企業そのものの品質、人材の品質も高めていく。
そうした考え方こそが、これからのBtoB企業に求められる競争力の源泉になるのかもしれない。ブランド改革は単なる見た目の変化ではなく、企業文化と人材を育てるための長期的な投資として、今後ますます重要性を増していくだろう。
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