SNSで「偶発的な購買行動」を設計する新たなマーケティングサービスが登場
電通デジタルは、SNSを中心とした衝動買い体験を創出する新サービスの提供を2025年6月26日に開始した。これまでのSNSマーケティングは、商品やブランドの認知・理解を促進する役割が強かったが、新サービスはユーザーとの接点から偶発的な購買行動の創出まで設計する点に特徴がある。同社はこのアプローチが、従来の「計画購買」とは異なる新しい需要創造の戦略になると位置付けている。
SNSでは、日常的に商品やサービスが情報として目に入ることが増えており、それが思わぬ購買につながることがある。このような偶発購買を戦略的に生み出すため、電通デジタルは独自のノウハウと技術を組み合わせた支援サービスの提供をスタートした。この記事ではその狙いと仕組み、企業にとっての活用ポイントを整理していく。
「偶発購買マーケティング」とは何か
SNSマーケティングの従来型では、ユーザーに商品やサービスを認知させたり、情報を理解させたりすることが中心だった。しかし実際のSNS利用では、多くのユーザーが特に購入を意図せずにプラットフォーム内の情報を閲覧している。その流れの中で偶然目にした商品が興味を引き、結果として購買に至ることがある。電通デジタルはこの現象を「偶発購買」と呼び、これを戦略的に設計するマーケティング手法を新たなサービスとして打ち出した。
偶発購買を捉える背景
SNSは単なる広告媒体ではなく、友人・知人の投稿やコミュニティの推奨などを通じて、実際の購買意欲に影響を与える場として進化している。ユーザーが特に目的を持たずに情報を接触している中で、自然発生的に購入まで進むケースは増加している。この偶発的な発見と行動の連鎖を取り込むことで、マーケティング効果の最大化を図る。
こうした背景を受け、同社はSNSを「理解促進の場」から「需要創造の中心」に再定義し、マーケティング戦略の刷新につなげたい考えだ。従来の計画購買を前提としたアプローチだけでなく、SNS上で起こる思いがけない行動変化までを捉え、企画から実行まで一貫して支援するモデルが構築された。
3つのアプローチで「衝動買い」を設計する
電通デジタルの新サービスは「Insight Hack」「Algorithm Hack」「Idea Hack」という3つの手法を組み合わせて、偶発購買につながる体験を設計する。
① Insight Hack:ユーザーとブランドの出会いを設計
Insight Hackでは、SNS利用者の行動データや属性情報を分析し、ブランドとユーザーが自然に接点を持つ機会を創出する。この手法は単に広告を出すのではなく、ユーザーの興味関心や行動パターンを深く理解することから始まる。分析結果を基に、ユーザー視点に立ったコミュニケーション戦略を設計していく。
このプロセスによって、ユーザーが情報を受け取るタイミングや文脈、接触ポイントが最適化されるため、偶発購買につながる可能性が高まるという。SNS上の出会いが単なる情報の受動的な閲覧で終わらず、購買行動に結びつく仕組みの構築を目指す。
② Algorithm Hack:最適化されたメディアプランニング
Algorithm Hackでは、SNSプラットフォームが持つ独自のアルゴリズムや分析ツールを活用しながら、露出やエンゲージメントの最適化を図る。AIなどのデータ処理技術を用いて、どのタイミングでどのユーザーにどのコンテンツを見せるべきかを戦略的に検討する。
これにより単純な広告配信や投稿だけでなく、ユーザーの関心度や行動傾向にあわせて情報を示すことで、偶発購買につながる可能性を高める設計が可能になる。SNS上での偶然の発見を、戦略的に創り出していくことが狙いだ。
③ Idea Hack:生成AIとクリエイティブの融合
Idea Hackは、担当者の知見と生成AIの力を掛け合わせ、高い質のクリエイティブアイデアを生み出す手法だ。単にAIでクリエイティブ案を生成するだけでなく、マーケティング要件やブランドの背景を反映したアイデア開発を進める。
ここでは、SNS特有の文脈やユーザーの心理を捉えた表現方法が重視されており、偶発購買を引き起こす引き金となるようなクリエイティブ要素が設計される。生成AIを活用しながらも、人間の企画視点が重要な役割を果たす点が特徴だ。

画像引用:電通デジタル
企業のROI向上を見据えたマーケティング設計
この新サービスの目的は、単にSNS上で多くのユーザーにリーチすることではない。従来のマーケティング手法では見逃されがちだったライトユーザーや新規層の需要を掘り起こすことにある。SNSを通じて商品との偶発的な出会いを生み出し、購買までつなげることで企業のROI(投資利益率)を高める狙いだ。
SNSマーケティングの重要性はこれまでも語られてきたが、単に情報を届けるだけでは限界があるという見方もある。情報があふれる中でユーザーの注意を引き、さらに購買行動まで誘導するには、偶発的な発見を戦略として取り入れることが求められている。電通デジタルの取り組みは、この新しい潮流を象徴するものといえるだろう。
マーケティング領域の潮流はどこへ向かうのか
SNSでの衝動買いを戦略化するアプローチは、従来のROI評価やKPI設計にも影響を与える可能性がある。単純なクリック数や表示回数といった指標を超えて、ユーザーがどのようにしてブランドと出会い、購買にいたるかという体験設計自体を重視する考え方が進んでいる。
この背景には、SNS利用者が日常的に情報を受け取る仕組みと、テクノロジーによって個々の行動傾向が可視化されつつあることがある。偶発購買マーケティングは、こうした技術進化と消費行動の変化を捉えた新しい戦略モデルとして注目される動きだ。
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